デルタ関数をガンマ関数で微分すると反復指数になる
は積分すると初等関数で表せるのに、を積分すると高等関数になるのはなぜか。
同様に、は積分すると初等関数で表せるのに、の積分は高等関数になるのはなぜか、それは指数が一段階増えるごとに全く別の世界になるからである。*1
話は変わるが私は前に一度数学の世界を抜け出して、今までエンジニアとしてディープラーニングを含むITの技術を学習したり3Dゲームを作ったりしてきたが今頃になって、大学数学と物理を勉強し直している。といっても怪しげなものでなく、しっかり大学のカリキュラムに則って自分で参考書を買って超弦理論やM理論を目指して独学している。あとMIT、そしてNASAに入りたい。
研究らしい研究はブログに書けないくらい長くなっちゃうので、このブログではメモ代わりにちょっとした思いつきというかすぐに忘れそうだけどおもしろい自由研究みたいなものを書きたい。
ヘヴィサイドの演算子法において、とする。
このときの関数に対して
\begin{align}
e^Df(x)=f(x+1)
\end{align}
はよく知られた事実だ。これは左辺のが、 関数を1だけずらす並進作用素であると捉えることもできる。
いちおう過程を示しておくと、
\begin{align}
e^Df(x)=\left(\sum^{\infty}_{n=0}\frac{D^n}{n!}\right)f(x)=\sum^{\infty}_{n=0}\frac{f^{(n)}(x)}{n!}
\end{align}
ここで右辺は、をについてテイラー展開したものにを代入したものであるので、となるわけだ。
さっきはのことをただ関数とだけ述べたが、上式では無限階微分にまで考えているので、必然的には級であることが要請される。
また同様に、もわかる。これはつまり、逆にがでさえあれば、形式的にでもという演算子が並進作用素の役割を担う記号であると認識できるのではないだろうか。
ならば、指数関数だけでなく、高等関数のようなものを使ってみたらどうなるのだろう?
上記では並進について述べることができたが、もしかしたら考える関数によってたとえば回転、発散、加算、乗算、冪、テトレーションなどの演算を、とある微分の関数を使って表せることができるかもしれない。仮にすべての演算に対してそのような関数があるならその対応関係からなにかさらに発展した事柄に結べつけられそうな気もするが、微分というものが果たしてそこまで本質的なのだろうか。なぜ、曲線の傾きを求めようとして始まった微分という演算が、数学の中で解析学という一大分野を築き上げるほど深遠な性質を持たなければならなかったのか。なぜ人類は、ニュートン及びライプニッツが微積分を発明してからこの数百年間、この演算子に縛られ続けているのだろうか。分数階微分学や、擬微分作用素というものはあるが、微分という概念を超える画期的な「何か」はないのか。それとも、その「何か」が代数学や幾何学といったものなのだろうか。千年後、二千年後の人類は、一体どんな数学を扱っているのだろう。
いつもそんなことが気になって仕方がない。
...というのはただの独り言で、下記とは関係ない。
ここでガンマ関数
\begin{align}
\Gamma(s):=\int^{\infty}_{0}e^{-t}t^{s-1}dt
\end{align}
のの部分に微分演算子を入れて関数を作用させてみると、
\begin{align}
\Gamma(D)f(x)&=\int^{\infty}_{0}e^{-t}t^{D-1}dt f(x)\\
&=\int^{\infty}_{0}e^{-t}e^{(\log t) D}f(x)\frac{dt}{t}\\
&=\int^{\infty}_{0}e^{-t}f(x+\log t)\frac{dt}{t}\\
&=\int^{\infty}_{-\infty}f(x-t)e^{-e^{-t}}dt\\
\end{align}
ここで、最後の行でという変数変換を行っている。
また、畳み込み積分の定義
\begin{align}
(f*g)(x)=\int^{\infty}_{-\infty}f(x-t)g(t)dt
\end{align}
より最後の式は、反復指数函数(個のの上にが乗っている)を使うと
\begin{align}
\Gamma(D)f(x)=(f*\exp^2_{1/e})(x)\tag{1}
\end{align}
と表せる。つまり、ガンマ関数で微分するとその関数は、その関数と反復指数との畳み込み積分に変換されるということになる。ただ反復指数の部分に関してはを反復するかを反復するかという違いしかないので、添字部分にわざわざなどと書くのは気が引ける。なので反転(Reversed)反復指数関数なるものをつくってそれをもしくはとでも表記してやればスマートにかけるのだが、あくまでも自由研究の範囲なので面倒なことはしたくないし、胡散臭さに拍車がかかってしまいそうなのが嫌だ。
とにかく、微分演算子の世界においては、ガンマ関数に反復指数の畳み込みが対応しているというところが本質なのだと思う。
一方で、畳み込み積分においては、次のような等式が成り立つ。
\begin{align}
F[f*g]=F[f]F[g]
\end{align}
ここではフーリエ変換。
いちおうこの式を示しておくと、
\begin{align}
F[(f*g)(x)]&=\int^{\infty}_{\infty}(f*g)(t)e^{-2\pi i xt}dt\\
&=\int^{\infty}_{\infty}\int^{\infty}_{\infty}f(t-u)g(u)e^{-2\pi i xt}dudt\\
&=\int^{\infty}_{\infty}\int^{\infty}_{\infty}f(t)e^{-2\pi i xt}g(u)e^{-2\pi i xu}dudt\\
&=F[f(x)]F[g(x)]
\end{align}
である。
したがって、式の両辺をフーリエ変換してみると右辺は畳み込みであるので
\begin{align}
F[\Gamma(D)f(x)]=F[f(x)]F[e^{-e^{-x}}]
\end{align}
となる。ここで反復指数の部分を、わかりやすいように元の式に戻しておいた。というか、写像として書くならとして、それを値として書くならとしてという便宜上の問題なのだ。
ところで、ディラックのデルタ関数のフーリエ変換は1になることは定義からしても明らかであるが、デルタ関数をこの式に代入してみると
\begin{align}
F[\Gamma(D)\delta(x)]=F[\delta(x)]F[e^{-e^{-x}}]=F[e^{-e^{-x}}]
\end{align}
というふうに、両辺がともにフーリエ変換された状態に変形できる。よって両辺をフーリエ逆変換して
\begin{align}
\therefore\ \Gamma(D)\delta(x)=e^{-e^{-x}}
\end{align}
という式を得る。
タイトル通り言いたかったことはこれだけなのだが、長々説明してしまった。これはつまり、デルタ関数をガンマ関数で微分すると反復指数になるということであるが、はたして本当にこれは成り立つのだろうか? 成り立つとして、ここからなにか有用な結果を導くことができるのだろうか?
ちなみに、 は以下のようなシグモイド型の単調なグラフになる。
だが、冒頭でも述べたとおりこれを(不定)積分しようものならそれは高等関数になる。厳密にはリゥヴィルの判定法という、ある積分が初等関数で表せるかどうかを判定する方法がありそれでわかるのだが、この積分に関しては指数積分というれっきとした名のついた高等関数に変形できる。
したがって、
\begin{align}
\int^{1}_{0}e^{-e^{-x}}dx\tag{2}
\end{align}
という、一見なんとかこねくり回せば解けそうな積分も結局は閉じた式で書き表すことはできない。積分範囲に理由はない、というか被積分関数からすると不自然な範囲だろう。
余談だが、私は中学二年のときに、東大の文化祭に行ってそこの数学科で開催されていた積分100問を早く解く大会みたいなので優勝したことがあるほど、積分が得意である。ちなみに2位は数学科の人で、大差をつけて自分が勝った。だから大抵の積分は見ただけで解けるかどうかわかる(解が分かるとはかぎらない。。。)のだが、上式のように一見解けそうで解けないというのがもどかしい。
余談に余談だが、つい最近
\begin{align}
\int^{1}_{0}\log \Gamma(t)dt
\end{align}
という積分が解ける(というか解が知られている)ことを知った。相反公式を使うと解ける。
具体的には、
\begin{align}
\int^{1}_{0}\log \Gamma(t)dt&=\int^{1}_{0}\log \Gamma(1-t)dt\\
&=\int^{1}_{0}\log\left(\frac{\pi}{\sin\pi t}\right) - \int^{1}_{0}\log \Gamma(t)dt\\
&=\frac{1}{2}\left(\log\pi - \int^{1}_{0}\log\sin(\pi t) dt\right)
\end{align}
ここで、や、、などの三角関数の基本的性質を駆使すると
\begin{align}
\int^{1}_{0}\log\sin(\pi t) dt &=\int^{1/2}_{0}\log\sin(\pi t) dt + \int^{1}_{1/2}\log\sin(\pi t) dt\\
&= 2\int^{1/2}_{0}\log\sin(\pi t) dt\\
&= 2\int^{1/2}_{0}\log\frac{\sin 2\pi t}{2 \cos \pi t} dt\\
&= -\log 2 + \int^{1}_{0}\log\sin(\pi t) dt - 2\int^{1/2}_{0}\log\sin(\pi t) dt\\
&= -\log 2
\end{align}
が分かる。最後から二番目の式の第2項と第3項は、それぞれ一行目の左辺と右辺であるので、きれいに打ち消されている。
これにより
\begin{align}
\int^{1}_{0}\log \Gamma(t)dt=\frac{1}{2}\log(2\pi)
\end{align}
となる。なんともきれいな結果だ。
そうして、もう一度式を見てみよう。ねんのため再掲しておく。
\begin{align}
\int^{1}_{0}e^{-e^{-x}}dx
\end{align}
なんでさっきの積分が解けてコレがとけないんだ!?という気がしてこない? え、当然? あ、そう。まあどっちでもいんだけど。
このような一連の結果が示唆することとは、つまり積分するという行為の上では指数〜多項式〜対数レベルの世界ではおおよそ初等関数で表せるが、一度その世界から足を踏み外してしまうと、それまでの常識が通用しなくなるということなのだ。
この観点を踏まえると、
\begin{align}
\int^{1}_{0}e^{-e^{-x}}dx&=\int^{1}_{0}\Gamma(D)\delta(x)dx
\end{align}
というのは、それまでの常識を打ち破る何かを秘めているようにも見えてくる。
たとえば、
\begin{align}
\int^{1}_{-1}D \delta(x)dx = [\delta(x)]^{1}_{-1}=0
\end{align}
であろうから、ととのあいだに生ずる歪みのようなものを取っ払ってやれば、上の式も解けるのではないか、、、という淡い期待を抱かざるを得ない。
しかしながら、多分これ以上の詮索はあまり意味がないと思う。
もし画期的ななにかがあるとしても、それはここから生まれるものではなくてもっと上位の概念から生まれる高度なものに違いない。新しい概念を生み出すことは全くもって容易ではない。現在地球上に80億人いて1000年分の人口が集まっていると言われている中、それぞれの分野においてかつてないほどの競技人口がひしめき合い、今も世界のどこかで自分より頭のいい人たちが何かを変えようとして必死に頑張っている。そんな中で、いち素人が現状のまま成功できるだろうという考えは甘すぎる。
だから今自分ができることは、とにかく最新の数学・物理学を習得するまで努力研鑽し続けることだ。
とはいったものの、このままではなんとなく物足りないため、最後にちょっと変わった面白い等式を紹介したいと思う。上のことについて考えていたときについでに自分で導いたものなんだけど、すでにガウスかオイラーあたりがやっていそうで怖い。てか、やってるだろうな。
反復指数に関する積分
\begin{align}
\int^{\infty}_{-\infty}e^{-x}e^{-e^{-x}}\left(1-e^{-e^{-e^{-x}}}\left(1-e^{-e^{-e^{-e^{-x}}}}\left(\cdots \right)\right)\right) dx = \Omega
\end{align}
ここではランベルトのオメガ定数。
証明.
とする。
まず無限テトレーションの収束 | Mathlogで示されている通り、のときは収束するから、も収束し、で与えられる。
またのとき、である。
次に、合成関数の微分から、
\begin{align}
\frac{d}{dx}\rm{rex}^{n}(x)=\left(-\frac{d}{dx}\rm{rex}^{n-1}(x)\right) \cdot \rm{rex}^{n}(x)=(-1)^n \prod^n_{k=1}\rm{rex}^k(x)
\end{align}
が分かるから、右辺を積分することで、
\begin{align}
\int^{\infty}_{-\infty}(-1)^n \prod^n_{k=1}\rm{rex}^k(x)dx &= \int^{\infty}_{-\infty} \frac{d}{dx}\rm{rex}^{n}(x) dx \\
&=\rm{rex}^{n}(\infty)-\rm{rex}^{n}(-\infty)\\
&=\rm{rex}^{n-1}(0)-\rm{rex}^{n-2}(0)
\end{align}
一方、三行目についての範囲で和を取るとこれはtelescoping series(望遠鏡級数)であり、和が徐々に打ち消されてになる。
またのとき任意の実数についてであることは容易に分かるので、とすると、は単調減少でを満たすから、交代級数はAlternating series testを満たし、収束する。これにより総和記号と積分の入れ替えが可能となり
\begin{align}
\Omega &= \int^{\infty}_{-\infty}e^{-x}e^{-e^{-x}}-e^{-x}e^{-e^{-x}}e^{-e^{-e^{-x}}}+e^{-x}e^{-e^{-x}}e^{-e^{-e^{-x}}}e^{-e^{-e^{-e^{-x}}}}+\cdots dx\\
&=\int^{\infty}_{-\infty}e^{-x}e^{-e^{-x}}\left(1-e^{-e^{-e^{-x}}}\left(1-e^{-e^{-e^{-e^{-x}}}}\left(\cdots \right)\right)\right) dx
\end{align}
を得る。
\begin{align}
\end{align}